B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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カウンターテナー百花繚乱企画
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A Voix Haute --- L'Héritage des Castrats」 --- 昨今のカウンターテナー人気の高まりに乗じた感のある企画物CDである。天使の羽根を付けた上半身裸の若年男子のジャケット写真からして、あざとさが匂うアルバムだ。しかしカウンターテナー復活の立役者であるアルフレッド・デラーから、ジャルスキーやチェンチッチなどの若手スターまで、各世代のカウンターテナー歌手の歌唱が聴けて(それに加え、録音を残した唯一のカストラート、アレッサンドロ・モレスキの音源がボーナス・トラックに入っている)、3枚組で17ユーロというお得感もあり、年末にフランスのAmazonで注文した。(他国では「Altus-from Castrato To Countertenor」という名称で発売されている。このほうが誤解がないタイトルだろう)。こちらのHMVのサイトで試聴ができる。

年末年始は他のことに気を取られ、今頃になってやっと聴いてみた。手持ちのアルバムと重複する音源もかなりあるのだが、予想以上にお買い得ディスクだった。3枚のディスクに1912年生まれのデラーから1978年生まれのジャルスキーまで、およそ3世代にわたる15人のカウンターテナー歌手たちが勢揃いしており、デラーが中心となって復活させたカウンターテナー唱法が、半世紀以上を経てどのように発達してきたのか実感できる。あたり前だが、カウンターテナーの声といっても歌手によって様々な音色や個性があることもよく分かる。

このディスクに収められた歌手たち(生年順)の歌唱を聴いての感想を一言ずつ。偶然かもしれないが、生年が10年周期ぐらいで固まっているのが面白い:

アルフレッド・デラー (1912~1979、英):このディスクでは、しみじみと心にしみる「グリーンスリーブス」を歌っている。現代カウンターテナーの創始者として功績は計り知れない。

チャールズ・ブレット (1941~、英):深いアルトの声がバッハの宗教曲にぴったり。

ジェイムズ・ボウマン (1941~、英):彼の歌声には昔から馴染んでいたが、改めて聴いてみるとカウンターテナーというよりはハイ・テナーみたいな声かも。

ポール・エスウッド (1942~、英):同世代で同じ英国出身のボウマンに比べると、フェミニンな声だなー。でも好き。

ルネ・ヤーコプス (1946~、ベルギー):このディスクではバッハのカンカータ170番を歌っているが、なぜか色っぽい(そういうの、好き)。CT歌手から指揮者に転身というのは、CT歌手のキャリアの一つのロール・モデルかもしれない。

マイケル・チャンス (1955~、英):ボウマンやエスウッドなどより一回り若い彼も、年代的にはすでに大御所?ところで彼以降、スター性のある若いCTは英国から出てこないのだろうか?

ジェラール・レーヌ (1956~、仏):馥郁とした温かい声が父性(母性?)を感じさせる。ラテン語の宗教曲で垣間見せる、フランス人らしい柔らかい発音が好き。

デレク・リー・レイギン (1958~、米):ご存じ、映画「カストラート」の声の影武者。当たり前だがソプラノの音声と合成しない本来の声のほうが、ずっと良い。

ブライアン・アサワ (1966~、米):マッチョな外見に似合わず、とてもフェミニンで可愛い声。

デイヴィッド・ダニエルズ (1966~、米):ヴィヴァルディの宗教曲を歌っているが、妖艶すぎてドッキリ。

アンドレアス・ショル (1967~、独):気品が漂う歌唱。何を歌っても上手いけれど、聖歌隊出身の彼のルーツである宗教曲はひときわ素晴らしい。

ローレンス・ザゾ (米。生年不明だが、'60年代後半くらいの生まれか?):ヨーロッパ出身のCTにばかり目が向いてしまいがちだが、この人やデイヴィッド・ダニエルズの活躍をみると、音楽大国アメリカの底力を感じる。

クサヴィエ・サバータ (1976~、スペイン):CT歌手が勢揃いしたオペラ「聖アレッシオ」公演のお母さん役で見せた女装が衝撃的だったけれど(笑)、実はまだ若い歌手。落ち着いたアルト声が「おっかさん」の風格。

マックス・エマヌエル・チェンチッチ (1976~、旧ユーゴ):ウィーン少年合唱団の天才ボーイソプラノから大人の歌手に見事に転身した成功例。バロック曲もいいけれど、このディスクにあるロッシーニのアリア(「セミラーミデ」のアルサーチェ役)は、彼ならではの超絶技巧が冴えている。

フィリップ・ジャルスキー (1978~、仏):男声でもなく女声でもない(ご本人は「子供の声に近い」と表現しているが)、実に不思議で個性的な美声の持ち主。各地で引っ張りだこの人気歌手だが、とびきりデリケートな楽器を壊さず長く大切に使ってほしい。

【番外編】
アレッサンドロ・モレスキ (1858~1922):実はこの方の現存する録音をすべて収録した「The Last Castrato」というディスクを、かなり以前に資料的な興味から買った。1902年という古い録音のせいか、当時すでに歌手自身の最盛期が過ぎていたせいか、無理に声を張り上げているような痛々しさだけが印象に残ったディスクだった。今回、改めて聴いてみたが感想は変わらない。

ところで台湾のサイトを覗いたら、このCDが「假聲男高音的榮耀」として紹介されていた。「仮声男高音的栄耀:仮声(ファルセット)の男が出す高音の栄躍」って感じ?韋瓦第(ヴィヴァルディ)の聖母悼歌(スターバト・マーテル)など、中国語(繁字体)ではこう書くのだとわかって面白かった。おっと、脱線。
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by bonnjour | 2009-02-11 00:46 | 聴く&観る