B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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神秘的な障壁
先日からフランスのバロック音楽が、自分の中でちょっとしたブームになっている。そこで今日はフランソワ・クープランの「クラブサン曲集」第6組曲に収められた「Les Baricades Mistérieuses(神秘的な障壁)」。この作品は、曲そのものの魅力に加えて謎めいた題名が人々の興味をひくせいか、クープランのクラブサン(チェンバロ)作品の中でも最も有名な曲のひとつになっている。

IMSLPのサイトでこの曲の楽譜(パブリックドメイン)が無料ダウンロードできる(pdfファイルのpp. 123~125)。楽譜を見るとよく分かるが、曲全体に執拗に流れる掛留音と(それだけに、自分で弾こうとすると指が思うように動いてくれないのがトホホ)、それを支える低声部の動きが印象的で、それが「クセになる」効果を生み出しているようだ。
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イギリスの音楽学者ウィルフリッド・メラーズによると、この曲はクープラン一流の「音楽の冗談」で、継続的な掛留音がハーモニーを「妨げて」いるので「障壁」という名を付けたのではないか、という(Wilfrid Mellers, François Couperin and the French Classical Tradition, New York, Roy Publishers, 1951, p. 358)。しかし、この題名が本当は何を意味するのか、確かなことは作曲者本人にしか分からない。むしろ、曲名通りミステリアスなままにしておいたほうが余韻があるというものだ。

1989年にエイズのため38歳の若さで亡くなった鍵盤奏者スコット・ロス(Scott Ross、1951 - 1989)の演奏が素晴らしい。



それにしても80年代末~90年代初頭は、スコット・ロスの他にもロバート・メイプルソープ('89年没)、キース・ヘリング('90年没)、フレディ・マーキュリー('91年没)など、才能にあふれた若いアーチストたちが本当にバタバタという感じでエイズに斃れていった。その後、効果的な治療薬が次々と登場し、今ではエイズは死病でなく、早期に治療を開始すれば長期生存が可能な一種の慢性疾患として捉えられるようになったけれど、彼らがもう少し後にこの病に罹患していれば生き延びて、さらに素晴らしい活躍をしただろうにと残念でならない。
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by bonnjour | 2009-05-10 22:55 | 聴く&観る