B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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甘い炎~忘れ去られたカストラート・アリア集
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カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーがこの秋、「La dolce Fiamma - Forgotten Castrato Arias(甘い炎~忘れ去られたカストラート・アリア集)」と題した新譜をリリースする。ヨハン・セバスチャン・バッハの末息子で「ロンドンのバッハ」の別名を持つヨハン・クリスチャン・バッハ(1735 – 1782)の、今では演奏されることのなくなってしまった作品に光を当てたオペラ・アリア集だ。

18世紀の伝説的カストラートに捧げた「カレスティーニ~あるカストラートの物語」(2007年11月リリース)に続く、ジャルスキーによる知られざるカストラート・レパートリーのアルバム第2弾といったところだが、今回組んだのはジェレミー・ロレール指揮のル・セルクル・ドゥラルモニー。ロレールは1973年パリ生まれの若手指揮者で、この30代コンビがバロックから古典派の過渡期に作曲された知られざる名曲をどう料理しているのか、今から楽しみだ。

【収録予定曲】

J.C.バッハ:
・歌劇『スキピオの慈悲』より アリア「Pugna il guerrie」
・歌劇『カラッターコ』よりレチタティーヴォ「Perfida Cartismandua」とアリア「Tra l'orro」
・歌劇『シリアのアドリアーノ』よりアリア「Cara la dolce fiamma」
・歌劇『テミストクレス』よりアリア「Ch'io parta?」

グルック:
・歌劇『オルフェオ』よりアリア「La legge accetto」(J.C.バッハがグルックに曲を献呈)
・歌劇『アルタセルセ』よりレチタティーヴォ、他(曲順未定)

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ヨハン・クリスチャン・バッハ(上の肖像)は大バッハが50歳のときにドイツのライプツィヒで生まれ、14歳で父バッハを亡くしたあと、親子ほど年の離れた異母兄のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハに引き取られ音楽教育を継続するが、その後オペラを志してイタリアに留学し、最終的にはロンドンに定住して名声を得たコスモポリタンな作曲家だ。バッハ一族で唯一、オペラを手掛けたことや、バッハ家が深く信仰していたルター派からカトリックに改宗してしまったところなど、一族の異端児といえるかもしれない。ロンドンでは少年時代のモーツアルトと親交があり、この天才少年に影響を与えている。

今回のディスクではヨハン・クリスチャンが作曲したオペラから、カストラートのために書かれたアリアが集められている。その多くは世界新録音だという。また、併せて収録されたグルック(1714 – 1787)の「アルタセルセ」は、有名な「オルフェオとエウリディーチェ」(初版であるカストラートを起用した「ウィーン版」の初演が1762年)に20年ほど先立つ1741年に初演された彼のオペラ・デビュー作だ。

この時代の音楽に光を当てた理由については、ジャルスキーが昨年の8月にラジオ・プラハのインタビューで次のように語っており、今回のディスクの件にも触れている。
(中略)... それとは別に、バロック音楽とモーツアルトに挟まれて忘れ去られた感のある時代の音楽にも光を当てていきたいと思います。この時代には、トラエッタ(Traetta)、ヨメッリ(Jomelli)、ヨハン・クリスチャン・バッハ(Johann Christian Bach)といった、ギャラント・スタイルの優れたオペラ・セリア作曲家が沢山いました。ヨハン・クリスチャン・バッハの手によるオペラ・セリアのディスクを作る計画があります。彼はメタスタジオ(Metastasio)が書いた台本に基づいて、様々なオペラ(アルタセルセ、インドのアレクサンダー大王、ウティカのカトーネ、等)を作曲しています。

こうした作品は非常に美しく、作曲家自身も音楽史においてパイジェロと同じくらいの重要性を持っています。にもかかわらず、彼らの作品は大げさだといわれ、今ではあまり演奏されなくなってしまいました。しかし非常に力強い作品があります。これらはドラマチックなオペラとしての可能性を秘めています。若き日のグルックの作品を取り上げたチェチーリア・バルトリの素晴らしいディスク(訳注:「あの澄んだ流れ~グルック:イタリア・アリア集」)で、僕はこの時代を発見しました。チェチーリアのディスクを聴けば、グルックの才能は「オルフェオ」の登場を待たずに開花していたことが分かります。彼の作品の一部は忘れ去られていますが、その音楽は新鮮なインスピレーションにあふれ、力強く、オーケストレーションはバロックを超えてモーツアルトの先駆けとなっています。... (後略)


また、ドイツのクラシック音楽情報サイトKlassik Newsにディスクの紹介記事が載っていたのでご紹介する(拙訳)。
ジャルスキーによるヨハン・クリスチャン・バッハ

バッハといえばどうしてもヨハン・セバスチャンが思い浮かぶが、それだけがバッハではない。ライプツィヒ聖トーマス教会の音楽監督(訳注:J.S.バッハのこと)亡きあと、バッハ家の流れを担ったのは才能豊かな息子たちだ。その中で一番年少だったヨハン・クリスチャン(1735-1782)は、イタリア、ドイツ、ロンドンでキャリアを築いた。カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーはすでに、カストラートのカレスティーニのために書かれたアリアで、ほとんど忘れ去られたレパートリーを発掘するという途方もない楽しみを教えてくれた。そして今回はジェレミー・ロレール指揮のル・セルクル・ドゥラルモニーとともに、不当にもこれまで顧みられることのなかったヨハン・クリスチャン・バッハのオペラ作品に取り組んだ。

"La Dolce Fiamma" - 甘い炎、と題されたこのディスクで、ヨハン・クリスチャン・バッハはおそらく録音史上初めて、真のスター作曲家としての扱いを受けることになった。彼は全生涯を通してスターだった。テムズ川に遊んだ幼き日のモーツアルトでさえ、ヘンデルの死後イギリスのスター作曲家の座を引き継いだこの「ロンドンのバッハ(小川)」を詣でているのだ。ヨハン・クリスチャンのオペラ作品は当時の流儀に従って神話上の人物を中心に据えているが、音楽的には声楽およびオーケストラの扱いで、まったく新しい地平を開拓している。

彼のアリアを聴いたなら、その技法とドラマ性から、今まで埋もれていたモーツアルトの作品だと思うかもしれない。この新しいプロジェクトについて、ジャルスキーは「今まで忘れ去られていた作品に光を当て、その解釈者になるという役割が好きなんです」と語る。ヨハン・クリスチャン・バッハの時代がとうとうやってきた。
嬉しいことにヨーロッパでのリリース(11月13日)に先行し、日本では「来日記念盤」として10月21日に発売が予定されている。国内盤発売の詳細はこちらを参照。
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by bonnjour | 2009-08-29 05:02 | 聴く&観る