B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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生き生きとした即興性に彩られた夜 - ジャルスキー&ラルペッジャータ来日公演 (王子ホール)
ジャルスキー&ラルペッジャータの来日公演にまた行ってきた。会場は銀座・王子ホール。先週土曜日の東京芸術劇場(フジコ・ヘミングとのジョイントコンサート)、日曜日のサントリーホール・ブルーローズ(追加公演)と続けて聴いてきたが、自分にとっては今日が聴き納めだ。

ちなみに今夜は東京オペラシティでマルク・ミンコフスキがレ・ミュジシャン・ド・ルーブルを率いて来日公演(ラモー・プログラム)を行っており、そちらにもかなり魅かれたのだが、初心を貫いて(笑)ジャルスキーを選んだ。東京近辺のバロック音楽ファンの中には、ジャルスキーとミンコフスキを秤にかけて後者を選んだ人も多かったようだ。豪華な顔ぶれの来日公演が目白押しの東京だが、このように日程がバッティングするとなると良し悪しだ。

王子製紙がメセナ事業の一環として本社ビルに併設した王子ホール(1991年完成)は、客席数315席と小振りながら、親密なサロン的雰囲気を持つホール。古楽アンサンブルとカウンターテナーの演奏を聴くには最適の環境だ。

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演奏が始まり、あれっ?と思った。今まで2回の公演は、いずれもイタリア民謡歌手のルチッラ・ガレアッツィが力強く歌う「ああ、美しき人生」で幕を開けたのだが、今夜は器楽曲(カッツァーティ作曲のチャコーナ)で始まった。まさか、前回素晴らしい歌唱で聴衆を圧倒したガレアッツィが急病で降板?と心配になるうち、ジャルスキーが登場し、女性作曲家バルバラ・ストロッツィ作の「恋するエラクレイト」を歌いはじめる。これは「Udite, amanti (聞け、恋人たちよ)」で始まるドラマチックなラメント(嘆き歌)。私は今回、後ろの方の席に座っていたのだが、彼の声はシャープで張りがあり、後方にまでよく響く。そして時折り差し込む浮遊感が、聴く者を病みつきにする。

ジャルスキーが2曲歌った後は、カスタネットの激しいリズムが印象的なタランテラ(器楽曲)が演奏される。そしていよいよガレアッツィが「ああ、美しき人生」を歌いながらステージに登場した。地に足のついた存在感のある歌手だ。よかった、キャンセルじゃなかったんだ。後でロビーをよく見たら「曲順変更のお知らせ」という掲示があった。私はそれを見逃して早とちりしていたわけだ。

コンサート後にジャルスキーとプルハルが出席するサイン会が開かれたので、そこでお二人に曲順変更の理由をきいたところ、演奏効果を考えてのことという。冒頭で民謡歌手のガレアッツィを出してしまうと、最初から種明かしをすることになるので、「サプライズ」は少し後に登場させることにしたのだそうだ。また、前回の公演で演奏されたモンテヴェルディの「美しい乙女」および「安らかにみな忘れ」(「ポッペアの戴冠」より)は省略されて、かわりにルイジ・ロッシの「アヴェルヌスを離れよ」が入っていた。

このように、日を経るに従って演奏曲目の選択と順番が臨機応変に変化するのに加え、各曲のアレンジも日によって少しずつ異なっているのが興味深かった。即興演奏については言うまでもない。日本公演のプログラムに寄せた解説で、プルハルは次のように書いている。
「どんなバックグラウンドを持つミュージシャンにとっても、即興演奏とは、聴衆とコミュニケーションをとるための最も直接的な手段です。年齢や文化的背景にかかわらず、即興演奏はあらゆる音楽形式に勝ります」

その言葉を裏付けるように、この晩のコンサートは演奏者と聴衆が親密なホールの中で一体となり、生き生きとした即興性に彩られた音楽が次から次へと飛び出した。きっと、忘れられない夜になると思う。

↓ カーテンコールでのガレアッツィ(左)とジャルスキー。
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↓ カーテンコールを受ける出演者一同。いつまでも拍手が鳴りやまなかった。
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【演奏曲目】
器楽曲ジャルスキーのソロガレアッツィのソロで色分けした。最後の「ロマネスカによる子守唄」はジャルスキーとガレアッツィのデュエット。

・マウリツィオ・カッツァーティ:チャコーナ
 Maurizio Cazzati : Ciaccona

・バルバラ・ストロッツィ:「恋するエラクレイト」
 Barbara Strozzi : L’Eraclito Amoroso

・ジョヴァンニ・フェリーチェ・サンチェス:プレッソ  ロンデ トランクィッロ
 Giovanni Felipe Sances : Presso l’onde tranquillo


・即興演奏:タランテラ・ナポリターナ
 Improvisation : Tarantella Napoletana


・ルチッラ・ガレアッツィ:ああ、美しき人生
 Lucilla Galeazzi : A vita bella

・クラウディオ・モンテヴェルディ/即興演奏:ああ、私は倒れてしまう
 Claudio Monteverdi/Improvisation : Ohime, ch’io cado

・ジローラモ・カプスペルガー:アルペッジャータ
 Girolamo Kapsberger : Arpeggiata


・ルチッラ・ガレアッツィ:私の花の夢
 Lucilla Galeazzi : Sogna fiore mio

・即興演奏:タランテラ・イタリアーナ
 Improvisation : Tarantella Italiana

・G.A.パンドルフィ・メアッリ:ラ・ヴィンツィオリーナ
 G.A. Pandolfi Mealli : La Vinciolina


・クラウディオ・モンテヴェルディ:苦しみが甘美なものならば
 Claudio Monteverdi : Si dolce e’l tormento


・ドメニコ・マリア・メッリ:ディスピエガーテ・グアンチェ・アマンテ
 Domenico Maria Melii : Dispiegate, guancie amate

・即興演奏:ラ・ディア・スパニョーラ
 Imprivisation : La dia Spagnola

・ルイジ・ロッシ:アヴェルヌスを離れよ
 Luigi Rossi : Lasciate Averno


・マルコ・ウッチェリーニ:満足したルチミニア
 Marco Uccelini : La Luciminia contenta


・ルチッラ・ガレアッツィ/即興演奏:家が欲しいな
 Lucilla Galeazzi/improvisation : Voglio una casa


・トラディショナル/即興演奏:ロマネスカによる子守唄
 Traditionelle/Improvisation : Ninna, nanna sopra la Romanesca

【アンコール】

・ルチッラ・ガレアッツィ/即興演奏:家が欲しいな
 Lucilla Galeazzi/improvisation : Voglio una casa

・クラウディオ・モンテヴェルディ/即興演奏:ああ、私は倒れてしまう
 Claudio Monteverdi/Improvisation : Ohime, ch’io cado


・作者不詳:天国と地獄のシャコンヌ
 Ciaccona del Paradiso e dell'Inferno


・ルチッラ・ガレアッツィ:ああ、美しき人生
 Lucilla Galeazzi : A vita bella


・クラウディオ・モンテヴェルディ:苦しみが甘美なものならば(日本語歌詞による)
 Claudio Monteverdi : Si dolce e’l tormento


【耳寄り情報】
「音楽の友」9月号の「来日演奏家速報2010」に、ジャルスキーが来年9月に来日(予定)、というようなことが書いてあったのでサイン会でご本人に確認したところ、詳細は未定ながら、来年も日本公演を行う予定とのこと。しかも次回は自身が結成した「アンサンブル・アルタセルセ」を同伴する可能性が高いそうだ。今から楽しみだ。
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by bonnjour | 2009-11-05 05:39 | 聴く&観る