ヨーロッパの地方都市を転々とした挙げ句、ポーランドに流れ着いた管理人「B」の日常。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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リンゴはなんにも言わないけれど
2009年 12月 12日
袋詰めされたお徳用リンゴは割安なのだが、1袋に小型のリンゴが20個くらい入っていたりするので、小所帯だとうっかりすると腐らせてしまって結局高くつくことになる。 そこで、買ったその日のうちに相棒が焼きリンゴを作った。リンゴを皮つきのまま洗って、芯を抜いた穴に砂糖を詰めてオーブンに入れるだけ。1時間もしたら上部がカラメル状になった、なかなか美味しそうな焼きリンゴができた。菓子類にシナモンを使う習慣のない相棒が作ったので、私がほとんど出来上がった頃にシナモンを振った。そのため、ちょっと粉っぽくなったのが残念。でも、ラズベリー(冷凍物だ)を添えて食べたら、ちょっと素敵なデザートになった。 今回使ったのはブレイバーン(Braeburn)という、1950年代に発見されたニュージーランド原産の品種。米国リンゴ協会によると、レディ・ハミルトンとグラニー・スミスという品種の間の偶然の交配で生まれたと推定されるそうだ。クリスピーな果肉とたっぷりの果汁、そしてハッキリした酸味で私は気に入っている。今は日本の市場から消えてしまった「国光」という古い品種をちょっと思い出す味だ。 さて、西洋美術ではリンゴをアダムとイブが食べた「禁断の果実」になぞらえ、罪の象徴としてよく登場させる(もっとも、その果実がリンゴだった証拠はどこにもない)。 たとえば、こちらブロンツィーノ(1503 – 1572)作の「愛の寓意」(c. 1545、ロンドン、ナショナルギャラリー蔵)。この絵には足元の仮面(偽り)、砂時計を肩に載せた老人(年月の経過)、少女が持つ蜂の巣とサソリ(蜜と毒)など、様々な寓意がテンコ盛りだが、年端もいかない少年(キューピッド)と危ない関係になっているヌードの女性(ヴィーナス)は、お約束通りに罪のリンゴを手に持っている。神話の世界を描いたふうにみせて、ここで描かれる愛は邪な、禁断の恋だ。 ↓ リンゴ拡大図 下の写真のカルロ・クリヴェッリ(c. 1435 – c. 1495)作、「聖エミディウスがいる受胎告知」(1486、ロンドン、ナショナルギャラリー蔵)では、絵の一番手前の唐突な場所にリンゴがぽつんと置かれている。罪多き人類を救済する救い主、キリストの受胎を象徴しているのだろうか。リンゴの左側の巨大キュウリ(ピクルスにするガーキン)は豊穣(=受胎)のシンボルだそうだが、リンゴ以上に場違いな雰囲気を発散している。 ↓ リンゴとキュウリ拡大図 リンゴつながりで、さいごにもうちょっと新しい絵も。こちらのリンゴは罪の象徴というわけではなさそうだけど、謎めいたところはクリヴェッリと一緒だ。 René Magritte: Le Fils de l'Homme (個人蔵)
by bonnjour
| 2009-12-12 22:58
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