B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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バッハのクリスマス・オラトリオ
街は電飾やツリー、アーモンド菓子を売る屋台など、クリスマス色が一杯なのだが、季節用品はあらかた実家に預けたまま仮住まいの私たちのアパートは特別な飾り付けをしているわけでもなく、殺風景な感じ。せめて耳だけでもクリスマスの気分を味わおうと取りだしたのは、ハルモニア・ムンディから出ている、こちらのディスクだ。

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J.S.バッハ、クリスマス・オラトリオ
ルネ・ヤーコプス(指揮)
RIAS室内合唱団
ベルリン古楽アカデミー
ソリスト: ドロテア・レシュマン(S)
      アンドレアス・ショル(CT)
      ヴェルナー・ギュラ(T)
      クラウス・ヘーガー(Bs)

まずジャケットに惹かれる。趣味のよい絵を使ったハルモニア・ムンディ盤は、いわゆるジャケ買いの人も多いのでは? そしてヤーコプスの指揮のもとに集まったドイツ系の豪華ソリストの顔ぶれも魅力的だ。とりわけアルト・パートを歌っているショルは録音当時29歳と若いが、大変に安定した歌唱でその後の活躍もうなずける。ベルリン古楽アカデミーとRIAS室内合唱団による質実剛健な演奏をきいていると、ドイツのどこかの教会でクリスマス礼拝に参加しているような気持ちになってくる。

ただ、教会音楽は礼拝で使われるために書かれた実用品なので、演奏会で一気に聴くより、実際の典礼の最中に聴いたら感動もひとしおなのでは、とないものねだりの気持ちもわいてくる。この曲も、降誕節第1祝日(12月25日)から顕現節(1月6日)まで、6回の祝日用に書かれたもので(バッハによる初演では、ライプツィヒの聖ニコライと聖トーマスの2つの教会を行き来して演奏された)、それを演奏会で通して演奏すると3時間近くにもなる。

この作品の多くの部分は旧作のカンタータのメロディを流用し、歌詞を入れ替えた「パロディ」だが、それでいてひとつの独立した世界を構築しているのはさすがだ。第1部第5曲のコラール「Wie soll ich dich empfangen(いかにしてかわれは汝を迎えまつり)」と、第6部第64曲のコラール「Nun seid ihr wohl gerochen(いまや汝らの神の報復はいみじくも遂げられたり)」は、同じバッハの「マタイ受難曲」のコラール「O Haupt voll Blut und Wunden(血潮したたる主のみかしらよ)」と同じメロディ(下記楽譜)を使用しており、後に起こるイエスの受難を象徴しているという説もある。

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この旋律は、もとをただせばドイツの作曲家ハンス・レオ・ハスラー(1564-1612)の「Mein G'muth ist mir verwirret(わたしの心は千々に乱れ)」という恋愛歌から取られたものだ。人々に馴染んだ旋律が別の曲に転用された当時の習慣とはいえ、見事なリサイクルぶりに驚く。

クリスマス・オラトリオ全曲のスコアはこちらのIMSLP/Petrucci Music Libraryサイトでダウンロードできる。

ディスクのジャケットの絵は、ルネサンス期のヴェネツィア派の画家、ジョヴァンニ・ベッリーニ(c. 1430 – 1516)の「イエスの神殿奉納」(1460-64)。原画は80 cm x 105 cmのテンペラ画だが、ジャケットでは聖母マリアと幼子イエスの顔だけがトリミングされており、画面のひび割れも含めて原画のタッチが鮮明に出ているのも趣がある。

↓ こちらが原画。登場人物が一列に並ぶ構図は、舞台劇を見ているようだ。
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解説と対訳が英独仏の3ヶ国語で書かれたブックレットも充実している。美麗な絵画の写真多し。

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↓ ディスクの音源がYouTubeにあったので、貼り付けておく。降誕節第1日-第9曲:コラール「Ach, mein herzliebes Jesulein」(ああ、心から愛する幼子イエスさま)。



【追記】 パリ在住のCさんが、先週の土曜日にシャンゼリゼ劇場で行われたジャン・クリストフ・スピノジ指揮、アンサンブル・マテウスによる「クリスマス・オラトリオ」の演奏会に行ってらした。ソリストとして登場したナタリー・ドゥセが素晴らしかったとのこと。このディスクのようなドイツ色の強い演奏もいいけれど、パリで聴くフランス人演奏家主体のバッハも面白そうだ。
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by bonnjour | 2009-12-14 19:46 | 聴く&観る