B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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ヴィヴァルディの2つのグローリア RV 589 & RV 588
20年近く前、所属教会の聖歌隊にふらふらと入り、アルト・パートを歌っていたことがある。中声部は人手不足とのことで歓迎されたが、音取りもおぼつかないのに練習をよくさぼる私は、そのうちに脱落してしまった。日曜朝のミサの後が練習タイムで、寝坊してミサを欠席すると練習にだけ出るのもきまりが悪いので、そのまましらばっくれてしまうことが多かったのが理由だ。他のメンバーの方々はミサも練習も皆勤賞で、かなりレベルの高い合唱グループだった。なによりイタリアに本部のあるゴリゴリに保守的な修道会が任されているこの教会は、典礼における古典音楽を重視していた。重視しすぎて、ネウマ譜でグレゴリオ聖歌を歌わされたのには閉口したが。

この聖歌隊で歌った曲のひとつにヴィヴァルディのグローリア(RV 589)がある。アマチュア合唱団のコンサートなどでもよく取り上げられる曲だが、ある年の復活祭のミサで歌うために半年くらいかけて準備した。といっても全曲でなく合唱部分の抜粋だったのだが、1曲目の明るく輝かしい「Gloria in excelsis Deo」は復活祭という喜びの祝日にふさわしかった。上手な人たちに混じって一人で音程を外しまくっていた自分を思い出すと赤面するが、教会堂後方のバルコニーに設けられた聖歌隊席で声を張り上げるのはストレス解消にもなった(そういう不埒なことを考えるのは私だけで、他の方々は神への奉仕の気持ちをこめて歌っていたに違いない)。

ということで懐かしくもトホホな思い出のあるこの曲を、昨年秋にリリースされたリナルド・アレッサンドリーニ指揮のコンチェルト・イタリアーノ盤(アルト独唱:サラ・ミンガルド)で聴いてみる。これはnaiveの「ヴィヴァルディ・エディション」の一環で、例によってフォトグラファーのDenis Rouvreによる美女のビジュアルが目をひく。ラッキーなことにNaxos Music Libraryにも入っている。リンクはこちら

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↓ こちらがプロモーション・ビデオ。



この盤には有名なRV 589のグローリアのほか、その先駆けともいえる前作のグローリアRV 588、そしてRV 589の導入歌(introduzione)として作曲された「Ostro Picta, Armata Spina (深紅色に彩られ、棘で護られて)」(RV 642)が収録されている。曲順は、Ostro Picta」+ RV 589に続いてRV 588が演奏される。アレッサンドリーニがインタビューで語るところによれば、この2つのグローリアは対照的な性格を持っており、有名なRV 589がよりモダンで劇場的な効果を演出しているのに対し、初期バージョンであるRV 588はポリフォニックな色彩が強い。1枚のディスクでその対比を際立たせたかったそうだ。

ソプラノ独唱(Monica Piccininiが好演)で歌われる伸びやかな「Ostro Picta」は、きらびやかなRV 589のグローリアを先導するのにふさわしい。アリア・レチタティーヴォ・アリアという3部構成のこの曲の、「深紅色に彩られ、棘で護られて」という風変わりなタイトル(「深紅色で描かれた女」と訳されている場合もある)は、咲き誇ったと思ったら夕には色あせている野薔薇を指しており、そんな薔薇に象徴される儚い地上の栄光と、聖母マリアの永遠の栄光を対比させ、聖母を称える聖歌である。

このディスクでは導入歌からアタッカで演奏されているRV 589のグローリアは、同じ演奏者(アレッサンドリーニ&コンチェルト・イタリアーノ)による旧録音(NMLのリンクはこちら)の爆発度(笑)に比べるとずいぶん穏健だが、それでも躍動感のみなぎる演奏だ。サラ・ミンガルドのアルトは、きらびやかなこの曲に深みを与えている。

演奏される機会が少ないRV 588は、なるほどポリフォニックで実際の教会の典礼に適していそうだ。RV 589を聴きなれた耳には、そのパロディと思ってしまうようなメロディ(実際はその逆なのだが)が度々登場し、曲の進化の過程をみるようだ。

↓こちらがマイナーなRV 588。


Antonio Vivaldi: Gloria in D major RV588 -
I. introduzione (RV 639): Aria "Jubilate o amoeni cori"
II. Recitativo "In tan solemni pompa"
Sara Mingardo (contralto), Concerto Italiano, Rinaldo Alessandrini


さらに、RV 588のグローリアはヴィヴァルディと同時代の作曲家、ジョヴァンニ・マリア・ルッジェーリ(活動期間:1690頃–1720頃)の同名作品を下敷きにしている。インスピレーションを受けただけでなく、最終曲の「Cum Sancto Spiritu」などはルッジェーリ作品をそのまま引用するという大胆さ。彼が創作した素材がヴィヴァルディにどう取り込まれたのかをたどってみるのも面白い。


Antonio Vivaldi (G. M. Ruggieri): Gloria for 2 cori & 2 orchestras in D major (RV Anh. 23)
THE KING'S CONSORT / Robert King (director)

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by bonnjour | 2010-03-13 03:18 | 聴く&観る