ヨーロッパの地方都市を転々とした挙げ句、ポーランドに流れ着いた管理人「B」の日常。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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マドリッド旅日記 その4 美男に会いにトレドへ
2010年 05月 23日
エル・グレコ作「トレドの風景」日曜日。マドリッドから国鉄(renfe)の高速鉄道AVANTに乗ると30分で行ける古都トレドをCさんと一緒に訪ねた。短距離なので切符はすぐに買えるものと油断していたのだが、全席指定のAVANTの切符は窓口のみの販売で、番号札を取ったものの大変な待ち人数だ(客一人あたりに要する処理時間を「みどりの窓口」と比べてはいけない)。結局、目星をつけていた列車は出てしまい、1便後の切符が買えた(計画性のなさを反省)。 AVANTの出発するホームは飛行機の搭乗口のムード。乗車の前にX線の荷物検査がある。 私は「鉄子」ではないが、一応記録のために列車の写真も撮っておいた。 あっというまにトレドに着き、まず駅舎の立派なことに感心する。イスラムとキリスト教の建築様式が融合した「ムデハル様式」の建物で、駅舎ホール内部の壁や天井の組み木細工がとりわけみごとだ(写真下)。鉄道駅はもちろん歴史地区の外側に開設された新しい施設だが、味もそっけもない現代建築にせず、歴史的な様式を採用する心意気がよい(似たような例でいえば、善光寺にほど近いJR長野駅の仏閣型駅舎を取り壊してしまったのは暴挙だった)。 鉄道駅から20分ほど歩いて旧市街に入る。トレドはタホ川の渓谷を利用して築かれた城砦都市なので、中心部に行くにはひたすら坂道を上がっていく。今日はいい運動になりそうだ。 ↑ 12世紀に建てられた城門「太陽の門」。 旧市街に入ると午後3時前、スペインではちょうどお昼時なのでまずはレストランを探した。「伝統的なパティオ」が売り物のレストランを見つけて入った。前菜、メイン、デザート、飲み物で11ユーロの定食からガスパチョ(本来はアンダルシアの料理だけど今日のように暑い日にはもってこい)、うさぎの煮込み(家庭料理風の素朴な味)、赤ワインを頼んだ。デザートは、しっかりした味のプリンが出てきた。 食事の後は聖トメ教会にあるエル・グレコ(1541–1614)の「オルガス伯の埋葬」を見にいく。この教会のために多額の遺産を残した篤志家のオルガス伯ルイスが埋葬されるときに、天国から聖ステファノと聖アウグスティヌスが降臨し、埋葬を手伝ったという伝説を描いたものだが、聖ステファノが優美な美男に描かれているので私は前々からこの絵が大好きだ。 エル・グレコ作「オルガス伯の埋葬」 ↑ 聖ステファノ。ね、美男でしょ? 教会の中にあるオルガス伯の墓所の前から絶対に動かせないという決まりゆえ、この作品を見たければトレドに来なければならず、狭い礼拝堂の中は見学者で一杯だ。しかも下半分にはオルガス伯の埋葬の情景(史実としては14世紀のこと)を、絵が制作された16世紀当時のトレドの名士たちを登場させながらリアルに描き、上半分にはイエス・キリスト、聖母マリア、洗礼者ヨハネなどが揃う幻想的な天界が展開されるという二部構成のため、絵全体を見るのにかなりの時間がかかる。 幸い、団体見学者の波が引いた一瞬があったので絵の真ん前に陣取ってじっくり解読をこころみた。隣に陣取っていた英語圏から来た年配の女性が、この絵の要素を説明したガイド本を見せてくれたのが助かった。二部構成の分け目に位置する天使が腕に抱えるぼんやりした胎児のような物体が亡きオルガス伯の魂で、天使はそれを天上界に押し戻している。魂のぬけたなきがらは地上に埋葬され、魂そのものは天上で永遠の命を得るというわけだ。 しかし、私はそんなことよりオルガス伯のなきがらを抱える美男の聖ステファノが気になっていたことは言うまでもない(笑)。優雅でちょっと寂しげなこの面差しは、一度見たら忘れられないのではないか。 美男詣での後は土産物屋をひやかしたり、見晴らし台から見下ろす風景にエル・グレコの「トレドの風景」の面影を探したりして街歩きを楽しんだ。 名物のマジパン菓子は見た目が日本の栗饅頭にそっくりだが、味のほうは試していないので不明だ。
by bonnjour
| 2010-05-23 08:27
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