B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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ロレーヌで生まれてナポリで活躍したカタストロフィ画家
先週ナンシーで見たレオナルド・ヴィンチのオペラ「アルタセルセ」は、舞台の中ほどに置かれた大きなスクリーンの幻想的な絵画が印象的だった。古代神殿のような建物の内部で、円柱が派手に崩壊している絵である。

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↓ アップになると、こんな感じ。
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この絵の作者はモンス・デジデリオ(Monsù Desiderio)といい、フランソワ・ド・ノメ(François de Nomé)、ディディエ・バラ(Didier Barra)、そして少なくとももう一人の氏名不詳画家の共同ペンネームである。ド・ノメとバラは、ともに16世紀末にロレーヌ地方のメスに生まれ、イタリアに渡って17世紀前半のナポリで活躍した。

舞台装置ではグリザイユ(モノクロ絵画)になっているが、オリジナルは「偶像を破壊するユダ王国のアサ王」という作品(下写真)だ。画面右手の、円柱が崩れ落ちて火が上がっているところなど、さしずめ現代の劇画なら「ガラガラ、ドスン」などという書き文字が使われそうな勢いだ。
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モンス・デジデリオ「偶像を破壊するユダ王国のアサ王」

この絵でみるような、カタストロフィをテーマにした作品が、モンス・デジデリオの特徴であり、それは混乱と不安の時代を反映したものであるという。文筆家のグスタフ・ルネ・ホッケは、名著「迷宮としての世界」の中でデジデリオを、最後の偉大なマニエリスム芸術家と呼んでいる。マニエリスムとは、盛期ルネサンスとバロックの合間に出現した、極度に技巧的・作為的で誇張や非現実性に彩られた芸術様式であり、それが生まれた時代背景にはローマ略奪(1527)、宗教改革、ローマ教皇の権威の失墜といった世の中の混乱がある。

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モンス・デジデリオ「炎上する遺跡」

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モンス・デジデリオ「スザンナと長老たち」

さて、モンス・デジデリオことフランソワ・ド・ノメとディディエ・バラは、ロレーヌ地方に生まれ、ナポリで活躍したと書いた。そして今回は、ロレーヌ国立歌劇場(ナンシー)で上演されたナポリ楽派の主要な作曲家であるレオナルド・ヴィンチのオペラに、その絵画作品が舞台装置として使われた。この符合が、なんだか嬉しい。
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by bonnjour | 2012-11-18 00:20 | 聴く&観る