B的日常
bonnjour.exblog.jp

ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
ブログパーツ
プロフィール
美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
最新のトラックバック
Wheelock's L..
from えいじゅなすの本棚 − 英語..
ミケランジェリ/ショパン..
from クラシック音楽ぶった斬り
フィリップ・ジャルスキー..
from ご~けんのAudio & C..
NAXOS MUSIC ..
from Ceciliaの部屋
カテゴリ
以前の記事
その他のジャンル
サイバー空間のWunderkammer(驚異の部屋)
才気煥発なブログでいつも皆を楽しませてくれているgalahadさんが先日、ドイツの新聞Der Tagesspiegel に載った興味深い記事をリツィートしてくれた。Deutsche Digitale Bibliothek(DDB)のベータ版がオンライン公開(2012/11/28)されたというニュースだ。DDBは、ドイツ国内の様々な図書館、博物館、文書館、フィルムライブラリーなどのデジタル化資料(本日現在で1,886の機関から集められた約560万点)を一元的に提供するポータルサイトで、それらを欧州の電子図書館ポータル「Europeana」(収録資料数:2,000万点)へ提供するアグリゲーターの機能も担っている。

c0163963_1484863.jpg

↑ Deutsche Digitale Bibliothekのトップページ。



↑ Deutsche Digitale Bibliothekが作成した紹介ビデオ。英語版が作られていることからも分かるように、ドイツのデジタル化資料一切を取りまとめるポータル・サイトとして、外国からの多数のアクセスも想定しているようだ。

Tagesspiegelの記事では、このポータルを21世紀のWunderkammer(驚異の部屋)と表現して、その取り組みを紹介するとともに、現在の課題についても述べている。課題というのは、著者の死後70年以上経ち(著作権保護期間を死後70年とするのが欧州の趨勢)パブリックドメインになった資料以外は、デジタル化して収録・公開できないことで、20世紀の著作物の多くは、現時点では対象からもれてしまう。また一方では、ビジネスの世界でGoogle Booksが700万冊以上の現代の出版物をデジタル化している現状があり、電子図書館という公的サービスと商用サービスの間の利益の衝突という問題がある。

c0163963_172284.jpg

Das Museum des Ferrante Imperato, 1599

さて、ここで電子図書館に擬せられている驚異の部屋とは、諸国から取り寄せた珍品を集めた博物陳列室で、15~18世紀にヨーロッパで流行した。ドイツ語のWunderkammerのほか、フランス語のCabinet de curiosités(珍品陳列室)という名でも知られる。つまり、現在の博物館の祖先みたいな存在で、そのはるか先の子孫が電子図書館というわけだ。王侯貴族にだけ許されていた「驚異の部屋」が、今では庶民の私でも、パソコンとネット環境さえあれば自分のものになるという飛躍的な「情報」と「知」の大衆化。いや、それだけに、気の遠くなるような大量の情報をかみ砕き、交通整理する指南役が必要になるわけだけど。

c0163963_193431.jpg

図書館のデジタル・アーカイブ化は世界的な潮流だ。欧州では、上述のEuropeanaに各国の100以上の図書館や博物館が参加している。また米国では米国議会図書館が所蔵資料(総計1億4,000万点)のうち、米国の「歴史資料」をデジタル化・ウェブ公開したほか、文書、写真、動画等、1,500万点をデジタル化済みである。

そして日本の国立国会図書館でもプロジェクトが進んでいる。国会図書館が1968年までに受け入れた戦前・戦後の刊行図書、議会資料、法令資料、児童書のうち、約89万点がデジタル・アーカイブ化されており、著作権処理済みの約32万点はインターネットで閲覧できる。また、雑誌のデジタル化も行っており、現在、所蔵する雑誌のうち約102万点(約1.1万タイトル)が収録されている。

というわけで、国立国会図書館の当該サイトには、下記のようにデジタル化資料のアクセス数ランキングが載っている(2012/12/22 23:00閲覧)。

1位 古事記. 上
2位 エロエロ草紙
3位 最近朝鮮事情

お堅い国立図書館のサイトに2位の「エロエロ草紙」(酒井潔著、竹酔書房刊、1930年11月発行)というタイトルが異彩を放っているので、早速見にいった。1930年(昭和5年)といえば、「エログロ・ナンセンス」のアングラ文化が花盛りだった時代。著者の酒井潔(1895 - 1952)は、魔術・秘薬・性愛に関する文献の収集家にして個人誌「談奇」の発行人。エロエロ草紙という刺激的なタイトルの割には、アート的なヌード(絵、写真)や海外の艶笑譚の翻訳、恋人との週末旅行の作法指南など、インテリで上品な内容ではないか。内容そのものに(*´Д‘)ハァハァするというよりは、太平洋戦争前の、日本が平和でのどかだった時代の性風俗を垣間見るという、文化史的な面白さを感じるコンテンツである。

これも、一種の日本版Wunderkammerかも、ね。
[PR]
by bonnjour | 2012-12-23 00:38 | 読む