B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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マックス・エマニュエル・チェンチッチの新アルバムは、高貴なる共和国ヴェネツィアへのオマージュ
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Giovanni Antonio Canal, detto il Canaletto (1697 - 1768), "Il Canal Grande e la chiesa di Santa Maria della Salute"

c0163963_2225674.jpg7世紀末から1000年以上の長きにわたり存続したヴェネツィア共和国は、正式名称を「Serenissima Repubblica di Venezia(もっとも高貴な共和国ヴェネツィア)」という。東地中海貿易を独占し、圧倒的な海軍力をバックに栄華を極めたこの国は、ダルマチア(現在のクロアチア沿海部)、イオニア海、エーゲ海、キプロス等に版図を広げたが、大航海時代になると地中海貿易の重要性は相対的に低下していき、その一方ではオスマン帝国に多くの領土を奪われるなど、衰退期を迎える。ナポレオン率いるフランス軍に降伏したヴェネツィア共和国は、講和条約の取り決めによってオーストリアに領有されることになり、1797年に国が消滅した。

クロアチア生まれ、ウィーン育ちという、ヴェネツィアの歴史と浅からぬ縁があるマックス・エマニュエル・チェンチッチの新しいディスク「Venezia - Opera arias of the Serenissima」(1月25日リリース)は、かつての高貴な共和国に捧げるコンセプト・アルバムで、ヴィヴァルディとその同時代人作曲家たちの、知られざるオペラ・アリアで構成されている。オケは、バロック・ヴァイオリンの名手リッカルド・ミナーシが指揮するアンサンブル、イル・ポモドーロ。

水の都のイメージからか、ジャケットの地色は灰色がかった水色で、花唐草模様が飛んでいる。それを背景に、紫色を帯びた茶色いベルベットの上着と同系色の派手なタイに身を包んだチェンチッチが佇んでいるというデザイン。ヴェネツィア風俗を描いたロココの画家、ピエトロ・ロンギ(1701-1785)の絵(下記)を思い出させるような、繊細で優雅な意匠だ。このようなコンセプト・アルバムの場合、曲目構成と演奏そのものに加えて、ジャケットのデザインもコンセプトを伝える大事な要素になるから、力が入っているのだろう。力が入りすぎて、チェンチッチの瞳孔をCG処理で強調して、少女漫画ばりにお目々に星が輝いているのは、やりすぎと思うが(笑)。

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Pietro Longhi, The Artist Sketching an Elegant Company

このアルバムのコンセプトと完成までのいきさつについて、先日公開されたプロモーション・ビデオでチェンチッチ本人が語っているので、ご紹介しよう。




【インタビュー要旨】
・ヴェネツィアは地中海とアドリア海、そしてオーストリア、スロベニア、クロアチアなどに大きな文化的影響を及ぼしたが、それらは自分が子供時代を過ごした場所でもある。このアルバムは、そんなヴェネツィアに捧げるささやかなオマージュだ。

・ラグーナ(潟)に囲まれ水上に浮かぶヴェネツィアは、Fata Morgana(蜃気楼)にも似た存在で、数多くの芸術家に霊感を与えてきた。

・アルバムの構想を立て始めた当初は、どんなものができるのか明らかではなかった。若き日のヴィヴァルディの作品で構成するつもりだったが、調査を進めていくうちに、同時代人の作品も取り上げてヴィヴァルディを多面的に捉えようということになった。そこでアルビノーニとか、ガスパリーニ(彼はヴィヴァルディと一緒に仕事をして、劇場の世界に引き入れた)といった作曲家を加えた。

・ヴィヴァルディの音楽には同時代人の影響が色濃いことが分かったので、ヴェネツィアそのものをアルバムのテーマに据えることにした。ヴェネツィア人で地元で活躍した作曲家に加え、ウィーンで活動したカルダーラのようにヴェネツィア出身で他国の音楽に影響を与えた人や、ジャコメッリのようにヴェネツィア人ではないがヴェネツィアでオペラ作品が上演されヴィヴァルディに多大な影響を与えた作曲家も取り上げることにした。

・リッカルド・ミナーシ(指揮)とイル・ポモドーロ(アンサンブル)との共演は、自然発生的なもので、ある意味偶然の産物だ。ヴァイオリニストとしてのリッカルドとは長い付き合いだったが、指揮者でアンサンブルのリーダーとしての彼と共演するのは新しい経験。彼らはヴェネツィア音楽に造詣が深い。


出来上がったアルバムは、ヴィヴァルディ作品を中心に、どれもレアな曲で固めてある。バルトリがアルバム「Sacrificium」で取り上げた、ジャコメッリの「Sposa non mi conosci」(後にヴィヴァルディはこの曲を自作のパスティーシュ・オペラ「バヤゼット」に使っている)などは、それでも比較的知られた曲かもしれない。(注記:この作品については3年前に当ブログで取り上げている

時の流れとともに埋もれてしまった知られざる名曲を探し当て、スター歌手が現代に生き返らせるという活動が盛んだが、このアルバムもその系譜に連なるもので、作品ハンティングの苦労がしのばれる。上記のインタビューにあるように、同時代人の作曲家たちが影響を与えあった痕跡を、収録曲からしのぶもよし、これらの曲を情感豊かに、時にはエキセントリックな色合いをつけて歌いあげるチェンチッチの独特な世界に遊ぶもよし、色々な聴き方ができるアルバムだと思う。高音部がいささか絶叫調になる気味のあるチェンチッチの歌唱は好き嫌いが分かれるかもしれないが、私はこういうケレン味のある歌い方も好きだ。

曲目の構成は次の通り。分かりやすいように、「外国人(ヴェネツィア共和国以外の出身者)でヴェネツィアと深い関わりをもった作曲家」に色をつけてみた。こちらのサイト(オランダのラジオ局radio 4)では、太っ腹にも全曲を通して試聴できる(Mevさん、情報感謝)。

01 Barbaro non comprendo: Adriano in Siria - Antonio Caldara
(c.1670-1736)
02 Mormorando quelle fronde: La costanza combattuta in amore - Giovanni Porta (c.1675-1755)
03 A' piedi miei svenato - Antonio Vivaldi (1678-1741)
04 Dolce mio ben, mia vita: Flavio Anicio Olibrio - Francesco Gasparini (1668-1727)
05 Anche in mezzo a perigliosa - Vivaldi
06 Sposa non mi conosci: Merope - Geminiano Giacomelli (c.1692-1740)
07 Io son rea dell'onor mio: Argippo, RV 697 - Vivaldi
08 Pianta bella, pianta amata: Il nascimento de l'Aurora - Tomaso Albinoni (1671-1751)
09 Mi vuoi tradir lo so: La verità in cimento, RV 739 - Vivaldi
10 Quel rossor che in volto miri: Motezuma, RV 723 - Vivaldi
11 Anche un misero arboscello: Nitocri - Giuseppe Sellitto (1700-77)

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by bonnjour | 2013-01-28 19:01 | 聴く&観る