B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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アンドレアス・ショルを聴きにコペンハーゲンまで 【後編】
さて、メインイベントのコンサート。会場は有名な「チボリ公園」の中にあるコンサートホールです。
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ちなみにこの公園、入場するだけで85クローネ(約1,900円)と物価高のデンマークらしく強気の料金設定なのだが、コンサートのチケットがあれば無料で入場できるときき、ほっとする。

本日のコンサートは英国の古楽オーケストラ、Orchestra of the Age of Enlightenment(略称OAE)をバックにアンドレアス・ショルが独唱するもので、独唱の合間にはOAEによる管弦楽曲の演奏もある。そして、長らくカウンターテナー界の第一人者として活躍してきたジェイムズ・ボウマン(もう66歳なのね)が冒頭にステージに現れ、聴衆にショルを「紹介」するという趣向だ。ボウマン氏はステージに現れると「皆さん、ご安心ください。今日、私は歌いませんから」と英国人らしいジョークで笑わせてくれた。

曲目は次の通り:

J S Bach: Suite nr. 3, D-dur, ouverture
G F Handel: Presti omai l'egizia terra (Giulio Cesare)
G F Handel: Dove Sei (Rodelinda)
J S Bach: Suite nr. 3, D-dur, "Air"
G F Handel: Oh Lord whose mercies numberless (Saul)
A Vivaldi: Cum dederit (Nisi Dominus)
J S Bach: Erbarme dich (SMP BMV 244)
 ******* 休憩 *******
J S Bach: Suite nr. 3, D-dur, Gavottes, Bouree and Gigue
J S Bach: Ich will dich nicht hören (BWV 213)
G F Handel: Vivi tiranno (Rodelinda),

つまり、ドイツとイタリアのバロックの大作曲家による宗教曲とオペラをピックアップし、歌われる言語もイタリア語、英語、ラテン語、ドイツ語とちりばめた、「ベスト・オブ・アンドレアス・ショル」(別名、幕の内弁当?)というナイスな内容だ。

彼が最初の音を発した瞬間から、その豊潤かつ温かみのある声に包まれ、夢心地となってしまった。彼の声は、音色からいうと深みのあるアルトだが、ファルセット(いわゆる裏声)を使うカウンターテナー唱法で起こりがちな「揺らぎ」が全く感じられない、抜群の安定性がある。なんだかものすごいパワーの女性アルト歌手が歌っているみたいだ。といって女性でこれだけ深みのあるアルト声を持っている歌手はなかなかいないため、その辺にカウンターテナー歌手の存在意義が出てくるわけだ(ビジネスでいえばニッチ市場といえるだろう)。

今夜の演目の中で最も心を打たれたのは、バッハのマタイ受難曲の悲痛なアリア「Erbarme dich(憐れみ給え、わが神よ) 」。ショルの音楽のルーツは、聖歌隊のメンバーとして子供の頃から馴染んだ教会音楽だというが、まさにそのルーツの最高峰にあるこの作品が聴衆の心を打たないわけはない。

また、ヘンデルのオペラ・アリアは彼の恵まれた体格(身長が190センチもあるそうだ)と男前の容姿も手伝って、歌う姿がえらくカッコよかった。クラシックの歌手は、もちろん持って生まれた美声や音楽性が最も重要なのだが、舞台人である以上、ルックスも大事だなと痛感する。

アンコールでは、楽しいハプニングがあった。はじめ、不思議な場所から歌声が聞こえてきた。聴衆は一瞬「???」となったのだが、次の瞬間にはその声の主がショルではなく、舞台の隅に控えていたボウマンであることに気付き、会場がどっと沸いた。そしてボウマンとショルとの二重唱(パーセルの「Sound the Trumpet」)が始まった。新旧の世代を代表する偉大なカウンターテナーのデュエットは、この日の聴衆への素敵なプレゼントだった。(それにしても他のパートに比べて現役寿命が短いカウンターテナーでありながら、66歳のボウマンがここまで声を保っているのにはびっくりした。)
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by BONNJOUR | 2008-06-09 00:45 | 旅する