B的日常
bonnjour.exblog.jp

ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
ブログパーツ
プロフィール
美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
最新のトラックバック
Wheelock's L..
from えいじゅなすの本棚 − 英語..
ミケランジェリ/ショパン..
from クラシック音楽ぶった斬り
フィリップ・ジャルスキー..
from ご~けんのAudio & C..
NAXOS MUSIC ..
from Ceciliaの部屋
カテゴリ
以前の記事
その他のジャンル
フランス歌曲の世界
ブログでお付き合いさせていただいている音楽好きの皆さん数名の間で、フランス歌曲がちょっとしたブームになっている。というのも、11月に初来日するカウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーが、リサイタルでフランス歌曲を歌うからである。

目でも楽しめるオペラと違い、外国語で歌われる歌曲は歌詞を前もって調べておかないと楽しみが半減してしまう。ということで、私も色々な声楽家が歌ったフランス歌曲のディスクを聴いたり、歌詞対訳を読んだり、楽譜を入手して自分で口ずさんでみたり、という予習をしている。ドイツ・リートがゲーテやハイネをはじめとしたドイツ文学と密接なつながりを持っているのと同様、フランス歌曲もボードレールやヴェルレーヌ、アポリネールといった近代フランス文学の大詩人たちの作品がたびたび登場するので、「音楽と文学の幸福な出会い」ってやつを堪能できるのが魅力の一つだ。

予習教材その1。アメリカのメゾソプラノ、スーザン・グレアムが歌ったレイナルド・アーンの作品集
c0163963_7273941.jpg



しっとりとしたメゾソプラノの声で歌われる、夢のように美しい歌の世界。ディスクのタイトルが「ベルエポック」(19世紀末から第一次世界大戦勃発までの古き良き時代)というのが、全てを語っている。マルセル・プルーストのお稚児さん(?)だったアーンの作品はどこまでも甘美で、これを聴きながらプルーストの「失われた時を求めて」なんぞを読むと、気分はもうベルエポックのパリにひとっ飛び。

予習教材その2。フランスのソプラノ、ヴェロニク・ジャンスが歌う、フォーレ、ドビュッシー、プーランクの歌曲
c0163963_7165447.jpg



ジャンスはバロック作品の演奏で評価が高い人だが、母語であるフランス語の歌曲も素晴らしい。ソプラノ歌手ではあるが、少々メゾソプラノっぽい音色を帯びた彼女の声で歌われるフランス語の美しいこと! 私はiPodに歌詞対訳を入れ、それを見ながら聴いている。なお、歌曲の歌詞および英訳は、Webで公開されているこちらのデータベースが非常に充実している(海外のサイトなので、日本語訳がないのは残念)。

予習教材その3。今回のリサイタルの当事者であるフィリップ・ジャルスキーが案内する、フランス歌曲の世界。



ヨーロッパのクラシック/ジャズ専門TV局、Mezzoで放映された番組を、ヨーロッパ在住の親切なファンがYouTubeにアップしてくれたもの。上記のPart1からPart6まであって、ジャルスキーの歌うアーン、フォーレ、ドビュッシーの作品が聴けるほか、師匠のニコール・ファリアン女史との練習風景も垣間見せてくれる。カウンターテナー独特の音色で歌われる歌曲は、通常の男声または女声による演奏とは一味違う、個性的な世界を形作っている(ヨッヘン・コヴァルスキーが歌ったシューマンの「詩人の恋」でも、同じことを感じた)。特に高音部は震えがくるほど美しい。

これを実演で聴いたら、ますます震えてしまうだろう。

最後に、ジャルスキーがチェコの「ラジオ・プラハ」によるフランス語インタビュー(2008/8/30掲載)で語ったフランス歌曲についてのコメント(拙訳)を紹介したい。

<< あと少しでフランス歌曲の録音が完了するところです。これはきっと多くの人を驚かせることになると思います。なぜなら「ドビュッシー、フォーレ、ショーソン、マスネ、サン=サーンス…。彼らの曲はカウンターテナーのために書かれたものではない」と言われるに決まっているからです。ドイツ・リートと同様に、フランス歌曲は「声の曲芸」の世界とは無縁なところにあります。誰だったか、歌曲を「音楽にのせた詩」と表現した人もいました。自分をカウンターテナーという狭い括りでなく、歌手であると考えれば、僕にも歌曲を歌う権利があると思ったのです。バロック作品と同様に偉大な作品が揃い、知られざる名曲も多数あるフランス歌曲という特色あるレパートリーを盛りたてていきたいと考えています。ですから、今回フランス歌曲を手掛けるにあたっては、少々「バロック的」なステップを踏みました。そして歌曲はとても親密な世界です。歌曲におけるピアノと声の関係が、僕はとても好きなのです。来年は歌曲のコンサートを多数開く予定です。>>

<< なぜアーンなのか?アーンは僕にとって、フランス歌曲におけるヴィヴァルディのような存在なのです。
彼の作品では、ピアノからほんのいくつかの音符がこぼれ出て、歌手がいくつかの音符を発しただけで聴衆はうっとりとなります。僕はエルネスト・ショーソンやガブリエル・フォーレの大ファンでもあるのですが、フランス歌曲のコンサートを開くとお客さんは断然、「クロリスへ」や「恍惚のとき」といったアーンの作品の魅力と、無からきわめてシンプルで明快な作品世界を作り出す彼の才能に心を奪われるのです。僕はプーランクやデュパルクは歌いませんが、そうした作曲家に比べると、レイナルド・アーンの作品が自分の声に非常に合っていることは、すぐ分かりました。アーンという作曲家は、自身が比較的軽い声の持ち主でした。彼が自らピアノを弾きながら歌った録音が残っていますが、とても興味深いものです。その魅力は20世紀初頭に特徴的なものです。>>
[PR]
by bonnjour | 2008-10-16 07:12 | 聴く&観る