B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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2008年 09月 12日 ( 2 )
フィリップ・ジャルスキーを追いかけてピカルディの森へ 後編
ついにフィリップ・ジャルスキーの生演奏に接することができた。ピエルフォン城の石造りのホールに響き渡った彼の声は、想像以上に豊かな音量で、デリケートな弱音から華々しい高音まで、まったく破綻のない完成度の高さに驚く。共演したL'Arpeggiataの演奏も乗りに乗っていた。日本から駆けつけたNさんとともに、ひたすら演奏に圧倒され、感動し、興奮する。

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コンサートはNinna Nanna al Bambin Giesùという幼子イエスの誕生を祝う歌で幕を開けた。古びた雅やかな響きだ。そして、器楽曲と声楽曲を交互に途切れなく演奏しながら(そのたびにジャルスキーは器楽演奏者たちの後ろに引っ込んだり、前に出たりを繰り返す)、最後から2番目に演奏されたモンテヴェルディのLaudate Dominumに至るまで、ひとつの大きな流れを作りだすという構成だ。その中で、特に印象に残ったのは、サンチェスのStabat Materで際立った、(よくフェミニンといわれる)ジャルスキーの声の、意外なほど男性的な側面。そして、クライマックスのLaudate Dominumでの、神の栄光を称えるのにふさわしい晴れやかで華々しい音色。これは色彩でいえば黄金のようだった。L'Arpeggiataの演奏も負けていない。アンサンブルの主宰者で指揮&テオルボを演奏したクリスティーナ・プルハルは音楽に仕える巫女といった風情。彼女がテオルボを、ときに打楽器的に扱うのが新鮮だった。

最後の曲である「Ciaccona di Paradiso et dell’Inferno」(天国と地獄のチャコンナ)は、L'Arpeggiataのメンバーとのユーモラスで楽しいかけあいがあり(なんたって、男性奏者2名がジャルスキーに対抗するかのように、突然歌いだしたのだ。それを受けて「下手すぎて、聴いてられない!」というジェスチャーをして笑わせるジャルスキー)、会場は沸きに沸いた。インタビューでは自分の性格を「内気」だというジャルスキーだが、エンターテイナーとしての資質もちゃんと持っているではないか。

アンコールでは彼の十八番ともいえる、モンテヴェルディの「Si dolce il tormento」や、古楽をジャズ風にアレンジした新機軸の作品(追記:この曲はモンテヴェルディの「Ohime ch'io cado」であることが後の放送で分かった)を披露。このジャズ風アレンジは、どうやら来年の4月に予定されている「Early Music meets Jazz」と題したジャルスキー&L'Arpeggiataのコンサートの前触れのようだ。

【おまけ】
ジャルスキーは演奏会の後によくサイン会を行うときいていたが、今日は無し。感動を直接伝えることができず、ちょっと残念。

会場を出る前にトイレに行こうと、Nさんご夫妻と一緒にお城の回廊を歩いていたところ、プルハル女史が演奏を終えて一息ついているところに遭遇。思わず「素晴らしかったです」と言って握手を求める。とても素敵な女性。このコンサートを聴きたいがために、日本から来たのですとNさんが言うと、そばにいた関係者の方が「それならハル(注:この夜共演した鍵盤奏者の北御門はるさん)に会っていきなさい」と言って、わざわざ北御門さんを楽屋から呼び出してくれる。

北御門はるさんは、ヨーロッパで活躍している新進気鋭の奏者だ。こんなフランスの田舎に突然現れた3人の日本人を見て、びっくりなさったかもしれない。でも、若い日本人の奏者が海外で伸び伸びと才能を開花させているのを見るのは、音楽ファンとして、実に嬉しいものだ。

【演奏会データ】
指揮&テオルボ演奏:Christina Pluhar
演奏:Philippe Jarroussky, contratenor
Alessandro Tampeiri, violon
Doron Sherwin, cornet
Eero Palviainen, archiluth, guitare baroque
Paulina van Laarhoven, lirone, viole
Margit Übellacker, psaltérion
Haru Kitamika, orgue, clavecin
Richard Myron, violone
David Mayoral, percussions

【プログラム】
« Audi Coelum »
Musique sacrée italienne au temps de Monteverdi

Anonyme
“Ninna Nanna al Bambin Giesù”(Napolitana)

Maurizio Cazzati
Ciaccona
(Trattenimento per camera, Bologna 1660)

Benedetto Ferrari
“Queste pungenti spine”

G.A. Pandolfi Mealli
La Vinciolina
(Sonate op.3 , Innsbruck 1660)

Maurizio Cazzati
“Salve Regina”

Maurizio Cazzati
Passacaglia

Claudio Monteverdi
“Venite siscientes”

Ignazio Donati
“O gloriosa Domina, - al modo di ecco”

Marco Uccelini
La Luciminia contenta
(Sonate. opus 4, Venezia 1645)

Giovanni Antonio Pandolfi Mealli
La Biancuccia

Giovanni Felice Sances
« Stabat Mater »
(Motetti, Venezia 1638)

Antonio Bertali
Chiacona

Claudio Monteverdi
« Laudate Dominum »
(Selva Morale)

Anonyme
“Ciaccona di Paradiso et dell’Inferno”
(Milan 1657)

【追記】
後日、France 3でこのコンサートが取り上げられた。

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by bonnjour | 2008-09-12 08:29 | 旅する
フィリップ・ジャルスキーを追いかけてピカルディの森へ 前編
午前中にパリのホテルを出て北駅から列車に乗り約1時間、コンピエーニュという駅に着く。そこからは事前に調べておいた通り、1日に数本の運行というバス(主に地元高校生の通学のためにある)をつかまえて、コンサートの行われる「ピエルフォン城」のあるピエルフォンに向かった。途中、緑の深い森を通り抜けると「アーティストを追っかけて、はるばるこんな所まで来てしまった(それにしても、よくやるなー)」という感慨が満ちてくる。

今日泊まるのは街外れにあるシャンブルドット(民宿)だが、最寄停留所として教えられた場所で降りたあと、みごとに逆方向に歩きだしてしまい、気がつくと街の中心部に。運よく観光案内所を見つけ、地図をもらうとともに宿までの道順を教えてもらう。

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やっと到着した民宿(上の写真が外観)は、雑誌フィガロ・ジャポンの「フランスの田舎特集」あたりで取り上げられそうな、女性好みの可愛い宿。全4室。それぞれの部屋に「庭に咲き乱れる花」とか「森の妖精」といったテーマがあり、それに沿った思い思いのインテリア・デザインが施されている。私の部屋のテーマは「狩り」で、広々としたバスルームと庭を見下ろすバルコニー付き。ちなみに部屋には内側からかける鍵(トイレなんかの鍵と同じ作り)が付いているだけで、外から戸締りするルームキーはない。あくまでも「よそのお宅の余った部屋に泊めていただいている」感じなのが牧歌的でほほえましい(とはいえ日本より犯罪率が高いフランスのこと、宿泊客の所持品の盗難事件に備えて保険はぬかりなくかけてあると思う)。
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少々休憩したのち、昼食とコンサート会場の下見をかねてピエルフォンの中心部まで行く。市庁舎のある広場に面したレストランのテラス(下の写真。背後に見えるのがコンサートの開かれる城)で遅めの昼食。前菜に2種の鮭料理(スモーク&パテ)盛り合わせ、メインはニジマスのグリル、デザートにイチジクのグラタン。汗ばむ陽気ゆえ、飲み物はプロヴァンス産のロゼワインを注文。
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食事が終わりかけ、テラスでぼーっとしていると、すぐ横の道を、ボストンバッグを提げた背の高いやせ形の青年と、ヴァイオリン・ケースを抱えたモジャモジャ頭の男性が、楽しそうに話をしながら歩いていく。進行方向には今日のコンサート会場であるピエルフォン城がある。
あらま、フィリップ・ジャルスキー本人じゃない!
一緒の人は、きっと今日共演するL'Arpeggiataのメンバーね。
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私はあっけに取られて後姿を目で追うのみ。もちろんサインをもらいに突進するなんてことは、良識ある正統派(笑)音楽ファンである私には、とてもできない。心の中で「今日の演奏、楽しみにしていますよ」と声援を送っただけ。

パリでもロンドンでもない、こんな小さな街で行われるコンサートだからこそ遭遇できた、ちょっと嬉しいハプニングだった。
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by bonnjour | 2008-09-12 07:20 | 旅する