B的日常
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ドイツ、デンマーク、フランス(一瞬)と、流浪の生活を約10年。昨年秋にポーランドに流れ着く。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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2010年 03月 08日 ( 1 )
華麗すぎる経歴の宇宙飛行士候補(自称)が日本人を煙に巻いた件
先週の金曜日に東京大学が、同大学の大学院に勤務するトルコ国籍の助教(昔の「助手」職ね)に対し、7年前に授与した博士号(工学)の取り消しを決定したと発表し、各紙で大きく報道された。取り消しの理由は「不正な方法で学位の授与を受けた」ことで、ひらたくいえば学位論文が盗用だらけ(論文全体の約4割)だったということだ。博士号の取り消しというのは、133年の東大の歴史で初めてのことだという。

宇宙エレベーター」(地上と宇宙を結ぶ装置)や「インフラフリー住宅」(水道・電気などのインフラに頼らずに暮らせる住宅)など、ユニークな研究に取り組む気鋭の外国人研究者として朝日新聞や日経BPなど大手マスコミに登場し、日本語の著書も数冊あるこの助教(以下S氏)の華麗すぎる経歴や業績(いずれもご本人が主張)については前々から疑問の声が出ていて、ネット上のコミュニティではここや、ここや、ここで色々な人が検証を行っていた。ドイツ生まれのトルコ人である(これは本当)ご本人いわく、イリノイ工科大学建築学科卒業後、24歳でプリンストン大学数学部講師に就任(学部卒でいきなり名門プリンストンで畑違いの数学の講師?)、NASAの客員研究員として活躍しトルコ人初の宇宙飛行士候補に選ばれ、その一方ではトルコ代表スキー選手としてオリンピックに出場、本業ではU.S.Technology Awardやケンブリッジ大学物理賞など、数々の栄誉を受けるという、スーパーマンみたいな人だが、ここまで華麗な経歴だと、ついつい裏を取ってみたくなる。

私も検証の成り行きを興味深く見守っていた一人だが(要は野次馬だ)、彼の自称する経歴を否定する情報、たとえば「宇宙飛行士候補」の事実確認に対するNASAやトルコ政府からの否定的な回答が昨年11月頃から次々と報道されたのに続き、とうとう東大が博士号の取り消しという前代未聞の措置をとったことで事態が急展開した感がある。

ネット上で多くの一般人が関わってS氏の主張する経歴や業績の検証が行われたのは、単なる好奇心ややっかみからではなく、彼の研究に対して税金が財源である科学研究費補助金(科研費)が交付されていたことが大きいだろう。科研データベースで情報が一般公開されているが、それを見ると彼が代表者である「宇宙技術を活用した住宅建設におけるインフラフリー施設の構築に関する研究」には2006年&2007年度にあわせて350万円の科研費が下りている。この研究の計画書および報告書には虚偽や盗用が山盛りであることが指摘されるほか、彼が経歴書に記している論文や特許、受賞歴についてもことごとく、その存在が確認できないか、他人の業績であることが分かってきたという。論文の盗用や実験データ改竄などという、みみっちい話でなく、これはもう、一人の偉大な科学者を捏造した壮大なプロジェクトだとしかいいようがない(爆笑)。

本業の「研究」以外に、S氏は本の執筆や外部の講演活動、自らが主宰する私塾での一般人向けレクチャー(これが1回1万円という高額の受講料)など、日本で稼ぎまくっていたわけだが、東大で博士号を取得し今もそこに所属する研究者(これは動かしようのない事実)というブランド力や権威がそれを可能にしたことは間違いない。あと、日本語を流暢にあやつる外国人であったことが好感度アップに貢献したかも(ちなみにトルコ語話者にとって言語構造が似ている日本語のマスターはさほど難しくないそうだ)。それにしても、盗用だらけの論文で博士号を授与してしまった東大こそ、いい面の皮だ。学位審査って、そんなにユルいものなの?性善説を信じる日本人を騙すのは赤子の手をひねるより簡単、とよくいわれるが、彼の著書や講演に感銘を受けた一般人はさておいて、日本の学術界に君臨する東大までが口八丁手八丁の外国人におちょくられた感じがして、なんだかすっきりしない。

S氏には、壮大な架空の世界を構築した創造性と卓越した写真加工技術(たとえばNASAの宇宙服を着用した写真を自著に掲載しているが、この写真には様々な矛盾点があり、他人の写真の首をすげかえたものだとほぼ特定されている)を、今後はポジティブな方向に生かしていただきたいものだ。

↓ S氏が華々しく登場するこのニュース番組のクリップも捏造?


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by bonnjour | 2010-03-08 18:21 | 思う