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B的日常
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ヨーロッパの地方都市を転々とした挙げ句、ポーランドに流れ着いた管理人「B」の日常。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。

by bonnjour
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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秋の大型連休便乗の旅日記 その4:アラブ文化=>中華街=>ユダヤ人地区とエスニックな日曜日
今日は日曜日。朝一番でセーヌ河沿いのサンルイ島の対岸に位置するアラブ世界研究所に見学に行く。この施設はアラブ世界との文化交流促進のために設立されたもので、アラブの音楽やダンス、映画の公開やアラビア語コース、そして図書館や博物館がある。私は博物館の常設展を見たが、地中海に面したフランスやスペイン、イタリアなどヨーロッパ各国にアラブ文化が伝わった様子が分かる、大変に興味深いものだった。中世の暗黒時代、ヨーロッパが後進地域だったころにアラブ世界では高度な文化が花開き、イスラムに征服されたイベリア半島からヨーロッパ全土に天文、医学、数学などのアラブ文化が伝わり、それがルネサンスにつながるのだから、アラブ文化とヨーロッパとの付き合いは長く、その影響は奥深い。そうした事実を再確認することのできる施設がパリのようなヨーロッパの主要都市にあるのは意義深いことだ。

この研究所のもう一つの見ものはフランスの建築家ジャン・ヌーベルによるユニークな建物(1987年竣工)で、壁面がすべてアラブ独特の幾何学模様のモチーフで覆われている。このモチーフが曲者で、カメラの絞りと同じ原理により外光の強弱で開閉し、建物内部の明るさを調節するという。素晴らしい着想だが、この絞りはよく故障するそうだ。着想を支えるメカを維持するのも大変だ。

↓ アラブ世界研究所の外観。
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↓ 壁面のモチーフを建物内部からみたところ。
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↓ これがカメラの絞りと同じ原理のメカ。
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この建物の最上階から見るセーヌ河の眺めは最高だ。しかも入場無料ときているので、隠れた観光スポットになっているようだ。
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さてアラブ文化を堪能した後は中国文化の結晶である「中華料理」に敬意を表すため(<==こじつけ)、地下鉄で数駅の場所にある中華街に行く。

パリには新旧二つの中華街があるが、私が向かったのは新しいほうで、70年代にパリにやってきた華僑系インドシナ難民が形成した街だ。そのため、純粋な中華料理でなくベトナムやカンボジア系の料理を出す店が軒を連ねている。その中から、牛肉麺の「フォー」が名物のこの↓ レストランを選び、昼の定食を注文する。
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プレフィックスの定食から、前菜は生春巻、メインはフォーを選んだ。生春巻はもっちりした皮とシャキシャキの具の対比が美味しい。名物のフォーは生肉に熱いスープをかけてレアにした薄切りの牛肉がたっぷり入っており、そこに別皿で供される生野菜をトッピングする。香りの高いミントと歯ごたえのよい生モヤシがちょっと甘めのスープとツルツルした米麺によく合う。

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デザートは冷やしたライチ。10ユーロ弱でお腹いっぱいになる充実のメニューだった。

その後は70年代にパリに流れ着いたラオス系華僑の兄弟が開業して大成功した中華スーパーマーケットの「陳氏百貨商場(Tang Frères)」に行って、デンマークでは買えない中華食材を買い込む。日曜日とあって店は大賑わいだ。また、食器売り場にラーメンとご飯にちょうどいい大小の丼があったのでそれも買う。今のアパートには丼がなくて不便だったのだ。パリくんだりまで来てラーメン丼を買うとは、我ながら情けない。
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↓ 行列のできる「Banh Mi」(ベトナム式サンドイッチ)の店。これは香ばしい焼きたてのフランスパンに、焼き豚などの肉類と、魚醤の入った甘辛いタレをからめた生野菜をはさんだもの。元フランス植民地のベトナムでは本国並みに美味しいフランスパンが焼かれているが、そうしたフランスの食文化とベトナム独特の肉料理や調味料を融合させたのがこのサンドイッチだ。実は私はこれが大好物で、昼食の後だというのに買ってしまった。1個2ユーロ30からというのは大変に良心的な値段。デンマークに同じ店が同じ値段で出ていたら(そもそも材料費だけで赤字になるが)、毎日でも通うことだろう。
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↓ 本場ベトナムではこんな風に生のコリアンダーを沢山入れているようだが、上の写真の店ではクセのあるコリアンダーはごく控えめに入っていた。
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中華街に長居をしてしまったが、次なる目的地に急ぐ。地下鉄に揺られること30分弱。パリ北東部にある複合施設ラ・ヴィレット(ミッテランの肝入りで開設)内の音楽博物館に入館したのは閉館の1時間ほど前。ここでは17世紀から現代までの楽器の歴史を、実物の展示とオーディオガイドによる解説・演奏で分かりやすく見せてくれる。ヨーロッパ音楽は時系列、世界の民俗楽器は地域別の展示となっており、ヨーロッパ音楽の展示のトップに登場するのはモンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」だ。時代が下るとリュリとラモーという自国が誇る大作曲家が登場するのもフランスらしい。大量生産される現代楽器と違い、古楽器にはさまざまな意匠がほどこされ、美術工芸品としての魅力も高いので、いつまでも眺めていたかった。時間配分を誤って1時間しか滞在できなかったのが、いかにも心残りだ。

↓ 音楽博物館の入っている「Cité de la musique」の外観。
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↓ 内部はこんな感じで(博物館のWebサイトから写真を拝借)、ヘッドフォンを付けた見学者が行きかう。
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音楽博物館が閉館したのが夕方6時。ホテルに戻って大急ぎでシャワーを浴びてから、ブログとSNSでお付き合いのあるAさんと夕食を取るため、彼女が宿泊しているマレ地区のホテルに向かう。

マレ地区はもともとブルジョワの邸宅がある地区だったが、迫害を逃れてパリにやってきた東欧系ユダヤ人が19世紀末から住み着くようになり、ユダヤ系コミュニティが形成された。キリスト教と違って日曜日が安息日でないので、マレ地区には日曜にオープンしている店が多い(同様の理由で中華街も日曜日に買い物ができる)。日曜に外食するには最適な場所だ。黒装束に帽子をかぶり、髭を伸ばした超正統派ユダヤ教徒の男性が行きかうこの地区をAさんと一緒に一回りし、「Le Coude Fou」という良さそうなワインバーを見つけたのでそこに入った。あとで調べたら、有名店のようだ。
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Aさんはアラカルトで、私は26ユーロの定食を頼む。グラス単位でオーダーできるワインの種類が多いので助かった。

前菜の鴨ロースト入りサラダ。量もたっぷりあって充実の一品。
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メインのアントルコット(牛のリブロース肉)のブルーチーズ・ソース添えは赤ワインが進む味。それにしても盛りが気前良いのにびっくり。

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デザートのフォンダン・オ・ショコラは味がリッチすぎて鼻血が出そう(笑)。

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全体的に、しっかりした味付けのビストロ風料理だった。ロマネスク美術に魅せられ、ヨーロッパの田舎町を訪ね歩いている行動派のAさんと、旅行やオペラ、美術の話をしながら頂くフランス料理は何よりの旅の思い出になった。

素敵なブログをやってらっしゃるAさんのこの日のブログ記事は、こちら
by bonnjour | 2009-09-20 08:09 | 旅する