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B的日常
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ヨーロッパの地方都市を転々とした挙げ句、ポーランドに流れ着いた管理人「B」の日常。音楽、美術、風景、食べ物など、美しいものや変わったものを追いかけて味わうのが好き。

by bonnjour
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美しいものや変わったもの、美味しいものを追いかけるのが好きです。日々の生活で接した、そうしたものへの感想を綴っていきます。過去の記事であってもコメントは大歓迎です。メールはこちらにどうぞ。
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ヴィヴァルディのStabat Mater: Part 2 ― 過去を閉じ込めた暗い部屋
さて、前回に引き続いてヴィヴァルディのStabat Materの話題。

マット・デイモンが主演した映画「リプリー」(アンソニー・ミンゲラ監督、1999年、米国) で、この曲が印象的に使われている。



PETER:
Can you imagine, if Dickie did kill Freddie, what must that be like? To wake up every morning, how can you? Just wake up and be a person, drink a coffee...?

RIPLEY:
Whatever you do, however terrible, however hurtful - it all makes sense, doesn't it? inside your head. You never meet anybody who thinks they're a bad person or that they're cruel.

PETER:
But you're still tormented, you must be, you've killed somebody...

RIPLEY:
Don't you put the past in a room, in the cellar, and lock the door and just never go in there? Because that's what I do.

PETER:
Probably. In my case it's probably a whole building.

RIPLEY:
Then you meet someone special and all you want to do is toss them the key, say open up, step inside, but you can't because it's dark and there are demons and if anybody saw how ugly it was...


この映画はアラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」の原作と同じ「The Talented Mr. Ripley」(パトリシア・ハイスミス作)を下敷きに、「太陽が~」より原作に忠実に映画化したもので、マット・デイモンはドロンと同じ「トム・リプリー」役を演じている。ためいきが出そうに美しくも野卑な若い頃のドロンと、冴えないオタク風のデイモンを同じ役に起用していることからも、2つの映画のコンセプトが全く違うことがわかる。

息をのむばかりの、ドロンのお下品な美しさと......ヴィヴァルディのStabat Mater: Part 2 ― 過去を閉じ込めた暗い部屋_c0163963_21242366.jpg


いじめられっ子キャラの、冴えないマット・デイモン版トム・リプリー
ヴィヴァルディのStabat Mater: Part 2 ― 過去を閉じ込めた暗い部屋_c0163963_21305615.jpg



金持ち放蕩息子ディッキー(ジュード・ロウが神々しいまでに美しい...)をイタリアからアメリカに連れ帰るよう富豪に頼まれた貧乏青年のトムが、現地で奔放なディッキーの魅力に参ってしまい(「太陽が~」と違い、こちらの作品ではトムがディッキーに対して抱く同性愛の感情が明示的に描かれている)一緒に遊びまわるも、ディッキーから疎ましがられるようになると可愛さ余って憎さ百倍、諍いから偶発的にディッキーを殺してしまう。その後、ディッキー殺しを隠匿するために、トムの行動を不審に思った金持ち坊ちゃん「フレディー」も手にかけ、最後にはトムの良き理解者だった同性愛の新しい恋人「ピーター」(上流階級出身のイギリス人という設定)まで、自分の嘘を隠すために殺してしまう、という「殺人スパイラル」の、なんとも後味の悪い映画だ。

で、上記のシーンは、トムがすでにディッキーとフレディーを殺し、ディッキーにフレディ殺しの罪を着せて潜伏しているところ。ディッキーにフレディ殺しの嫌疑がかかっているという前提で会話が進む。

ピアノでヴィヴァルディのStabat Materを弾いているトムに、ピーターは「人を殺した罪を背負って生きていくのは、どんな気持ちだろう」と問いかける。トムは「過去を地下室に閉じ込めて、そこに二度と入らなければいいんだ。僕はそうしている」と答える。「そうだね。僕の場合は建物まるごとになるけれど」と応じるピーター(この映画の時代設定である1950年代の同性愛者というのは、「クローゼット」どころか「建物全体」に身を隠して生きていかなくてはならない存在だったのだろう)。

次のシーンはヴィヴァルディゆかりのS.Maria della Pieta教会。音楽家であるピーターが指揮をして、ボーイソプラノの歌うStabat Materのリハーサルが行われている。

この映画で使われたStabat Mater、そしてインテリのゲイであるピーター役を演じたイギリスの俳優ジャック・ダベンポートに萌える人もいるようで(実は私も、こういうアクセントの英語を喋るイギリス男には滅法弱い)、次のようなトリビュート・ビデオがYouTubeに投稿されている。ここで使われているStabat Materは映画のオリジナル・サウンドトラックで、ボーイソプラノが歌ったもの。この曲をボーイソプラノに歌わせるのは、私には疑問だが。

by bonnjour | 2008-10-24 21:52 | 聴く&観る